【必須】安全な少年野球チームを選ぶ重要ポイント2つ
少年野球チームを選ぶ基準は?
そろそろ子どもに野球をやらせてみようかなと思っている時、地元の少年野球チームのことについて調べると思います。
「強いのかな?」
「厳しいのかな?」
「親の負担は多いのかな?」
など、選ぶ基準はいろいろあると思います。
そこに「安全に野球ができるのかな?」という基準は入っているでしょうか?
ネットで「少年野球チームの選び方」を検索しても、「安全」について触れている記事はほとんど出てきません。
この記事では、少年野球チームを選ぶ時に欠かせない「安全」という視点から大切なポイントをお伝えします。
安全な少年野球チームの特徴は「AED」と「投球制限」
結論からいいますと、
- AED(自動体外式除細動器)があること
- 試合で投球制限をしていること
この2点を少年野球チームの指導者に必ず確認してください。
野球をやる子どもの命と将来を守るために譲れないポイントです!
なぜAED(自動体外式除細動器)が必要なの?
野球をやっていて命に関わる危険は何でしょうか?
それは、心臓震盪(しんとう)による突然死です。
心臓震盪(しんとう)とは
心臓が細動(細かく震えてしまうこと)してしまい、ポンプの働きができず、血を全身に送り出すことができなくなってしまう状態のことです。
適切な対処がなされないと、命を落としてしまう危険性があります。
発生条件は、
- 心臓の真上あたりの場所に衝撃が加わる
- ある程度の強さの衝撃が加わる(時速64km/hが最も発生率が高い)
- 心臓が収縮する特定のタイミング(約0.015秒間)に衝撃が加わる
の3つです。
【参考文献】「若年者の突然死 心臓震盪」輿水健治,蘇生28(2),2009
当たる「場所」と「強さ」と「タイミング」
この3つの条件がそろってしまうと、健康な子どもでも心臓震盪になってしまいます。
参考文献で取り上げられている25症例のうち10例が野球のボールが当たったことにより発症しており、最も多いです。
また、衝撃が強ければ強いほど起こりやすいわけではなく、時速64km/hという子どもが投げるくらいの速さのボールが一番起きやすいところも注意が必要なところです。
発症年齢のピークは13~15歳にあり、子どもは特に注意が必要です。
子どもに発症が多い理由は、発育過程の子どもの胸郭は歪みやすく、衝撃が心臓に伝わりやすいからだと考えられています。
心臓震盪の対処法
予防法としては、
「胸に衝撃が加わらないように守る」
ことが大切です。
胸をガードするパッドもありますが、弱い衝撃でも当たる場所とタイミングによっては心臓震盪になってしまうので、必ず防げるわけではありません。
野球をやっていて心臓震盪が起きることを完全には防ぐことはできないので、起きてしまった時に適切に対処できることが最も重要です。
そのためにAED(自動体外式除細動器)が必要になります。
心臓震盪が発生した時に、素早く適切にAEDを使用することで、子どもの命を守ることができます。
AEDがなかったら
子どもが野球をやるのにAEDは必須です。
本気で子どもの命を守ることを考えて活動しているチームならきっと用意していると思います。
そんなチームなら子どもを安心して任せることができるでしょう。
ただ、現実問題としてAEDを用意しているチームは多くないと思います。
指導者が用意していない場合、親ができる最低限のこととしてはAEDがどこにあるか確認して伝えておくことです。
学校や公共施設で活動してる場合はAEDが設置されている場合が多いです。ただ、休日は校舎内に入れない場合もあるので、活動時間中に利用できるか確認しておきましょう。
また、AEDが設置されていない場合は、AEDがある場所を検索できる「全国AEDマップ」というサイトがありますので、そちらで探しておきましょう。
AEDを自前で用意する場合、レンタルだと月5千円ほど、購入だと20~30万円ほどです。
私の野球教室の場合はこちらの記事のようにセコムさんのレンタルを利用しています。
レンタルだと消耗品の補充や定期点検もあるのでおすすめです。
なぜ、投球制限が必要なの?
安全な少年野球チームを選ぶもう1つのポイントは「試合での投球制限」です。
野球をやっていて生じるケガに野球肘・野球肩と呼ばれる肘や肩のスポーツ障害があります。
全日本野球協会が2014年に行った全国調査では、肘・肩の痛みを経験したことのある少年野球選手は36.6%にのぼり、3人に1人以上の割合で痛みを経験していることが明らかになりました。
さらに、ピッチャーを経験した選手に限ると半数以上が痛みを経験していました。
【参考資料】平成26年度 少年野球(軟式・硬式)実態調査報告
野球をする小学生、特に全力投球を繰り返すピッチャーは野球肘・野球肩になる恐れがあります。
子どものスポーツ障害を防ぐために「投球制限」が必要なのです。
なぜ野球肘・野球肩の障害が発生するの?
野球肘・野球肩はその多くが投げすぎ(オーバーユース)によって障害が発生してしまいます。
高校野球でも投げすぎを防ぐために投球制限が導入されましたが、実は投球制限が最も重要なのは小学生の時期なのです。
成長期の子どもの骨には骨端線(こったんせん)という骨が成長して伸びていく場所があります。
骨端線はもろく、外から強い力が繰り返しかかることで隙間が開いてしまいます。
これにより、肘や肩に痛みを感じるようになります。
症状が初期の段階で治療するとまた野球をやれるようになりますが、症状が進んでしまうと、生涯に渡って肘や肩に障害が残ってしまい、野球ができなくなってしまいます。
また、高校やプロで肘、肩を痛める選手の多くは、成長期にすでに痛めていた所が再発したものです。
小学生のうちに肘、肩に障害が発生しないように、全力で投げる球数を管理することが重要になります。
なぜ「試合での投球制限」を確認するのか?
子どもが肘・肩を痛めないためには、練習でも試合でも全力で投げる球数を制限する必要があります。
特に「試合での投球制限」をしているかに指導者の姿勢が現れます。
野球はピッチャーが勝敗の行方を左右すると言われています。
調子よく投げているピッチャーを途中で変える判断はなかなかできません。
「試合での投球制限」をしている指導者は、目の前の試合の勝利よりも、子どもの将来を優先しているということがはっきりと分かります。
なぜ親がそこまで口出ししなければならないの?
少年野球チームを選ぶ重要ポイントとして
- AED(自動体外式除細動器)があること
- 試合で投球制限をしていること
の2点をお伝えしましたが、
「そこまで親が口出ししなくても…」
と思われるかもしれません。
ただ、今までAEDなしで指導をしても、子どもに投げさせすぎてケガをさせても、少年野球の指導者が責任を問われることはほとんどありませんでした。
大人は責任をとらず、最終的に子どもが命の危険にさらされたり、つらい思いをしたりするだけ。
少年野球をやる子どもの安全面に関しては、残念ながら親が目を配らないと守れない状況にあります。
熱中症に対しては対策が進んできました。
昔は水も飲まずに長時間練習させるなんてこともありましたが、今では指導者も熱中症予防に配慮し水分補給や適度な休憩をとるようになってきました。
これから子どもたちの野球環境をより良くしていくためには心臓震盪対策と投げすぎによる野球肘・野球肩対策を進めていかなければいけません。
少年野球チームを選ぶときに親が
「AEDありますか?」
「投球制限していますか?」
と指導者に聞くことで、指導者の意識も変わっていくはずです。
安心して野球を始めるために、この2つのポイントについてはこだわって少年野球チームを選んでいただきたいと思います。
子どもたちが安全に野球を楽しめることを心より願っています。